薪ストーブ製作
更新日:2013/04/03
建物の鉄骨や骨組みなど、金属関係の加工品をつくる工場で、そのかたわら数年前から独自の薪ストーブを作っています。
今回、その石川さんに薪ストーブのお話をおききしました。
※S=site I=石川工業さん
図面に縛られない製作がきっかけ
S ストーブをつくりはじめたきっかけってなんだったんですか?
I うちでは、図面のある建築ものも作るけど、どっちかって言うとお客さんの要望をきいて工場の中でいろいろな造作をするのが主な仕事です。 なんていうのかな、図面通りじゃなくてここをこう変えたい、こうしたい、ここに何がほしいって考えながらやっていくのが好きで、その延長で何か他につくれるものないかな・・・と思っていたんです。
まだ今みたいに薪ストーブっていうのがそこまでにぎわっていない頃、なんだか面白そうだなと思い何も考えずに一つつくってみるか!というのりでストーブをつくり
はじめました。
改善と試行錯誤の繰り返し
S どうやって作っているんですか?
I 主に9ミリの厚さの鉄の板を切って、曲げて、溶接して、削って作っています。 基本的に手づくりです。
S いろんな試行錯誤がありますか?
I ありますね。つくりはじめてみると、こうした方がいい、ああした方がいいって変わっていきます。そうやって、ちょっとずつ売り始めて使ってみてもらって、また作り変えるというように新しいのを作るたびに変わっていきます。
例えば、はじめの頃は空気調整はレバー式にしてあったんだけど部品が多くてたびたび調整が必要でした。だから今はつまみを引っ張るだけのシンプルな構造にしてあります。
機械ものといえば、レバーとかの方が昔はカッコよく見えたんだけど、使っていくうちにダメだなこりゃ~って そういうところはね、順に合理的な形になっていきますね。
あと、薪が燃焼する火室は以前よりも奥行きが深くなりました。そのことで窓が曇りにくくなって中の炎がよく見えるようになりましたね。
窓を大きくしたり、足の高さを変えたり、順に作って焚いて、と自分でやっていかないといい悪いがわからないからね。試行錯誤は山ほどありますよ。
ストーブの醍醐味は炎が楽しめること
S どんなストーブにしたいと思っていますか?
I うちで作るストーブは炎を楽しめるストーブにしたいなと思っています。
当然、暖房器具だからよく燃えて暖かいストーブにするようにしているけど、ただの暖房器具にはしたくないなとも思ってる。
木を燃やして暖を取る原始的な行為を、おおらかな気持ちで楽しめたらいいな。
ただ、どんなにいいと思ったものでもお客さんが満足しないと意味がないと思ってます。自分たちで作って、これでどうだ!っていうのはあまり納得しないので、こうしたいっていうお客さんの要望があればそれに合わせて考えて一緒に作っていくって感じかな。
安全性にもしっかりと配慮する
S 薪ストーブの安全性ってどうなんですか?
I 内部で不完全燃焼が起こらないように吸気を閉じても空気は少し入ってくるように準密閉にしてあります。しかし、薪を焚いている火室は完全な密封ではないですが薪の投入口など蓋が閉じた状態で火が外に漏れることはありません。
S じゃあ、火が中にあるのをほっといても大丈夫なんですか?
I 大丈夫なように作っています。
よく、火を消すときはどうやって消すのってきかれるけど、いちいち消す必要はないよって言っています。家全体を温めるものだからそんなに頻繁に消したりつけたりする必要はなくてずっとつけっぱなしでいいんです。燃料の薪が無くなれば勝手に消えますしね。
僕の家のストーブも、全部吸気を閉じても空気を吸うようにしてあるんで夜12時頃に少し薪を入れて全部吸気を絞っておいても朝方少し火種で残っています。そうするとまた火もすぐにつきますし、ストーブが冷えきってないのでそこそこ暖かいんです。
お客さんに満足・納得してもらえることが嬉しい
S ストーブをつくっていてうれしかった瞬間、もしくは体験ってありますか?
I なんだろう、つくってること自体だよね。
うれしいっていうのは、今まではこういう方法でやっていたけどこんな方法もあるじゃん!みたいな時とか、それがうまくいったとか。
普通だとお客さんに持って行って、それが一番うれしい時と思うじゃん、納得しているのを見ると ああ良かったー! ってそんな感じ。 安心したそれでうれしいってのもあるけど、うれしいって喜ぶよりかは、ほっとするっていうのかな・・・ ましてはじめて『いいよ!』って言ってくれた時とかね。ああ良かったって思うけど。
欲しい人に良いストーブを届けたい
S 石川さんにとって薪ストーブづくりってなんですか?
I 余裕が無いとできない。自分に。
ああ、今日一日やることないってなればいいけど、何時にあそこ行って、何時にあそこ行って,なんてやってるとちょっと手をつけられないなってなっちゃう。
これを商売にするって感じではないですね。興味あったり好きなひとがいたら、じゃあって見せて、それで気にいったら作ろうか?みたいな感じです。 輸入物やいろいろなストーブがあるけど、うちはうちの方法論でいけばいいかなって思っています。
S これからも石川ストーブの進化が楽しみです。
I いろいろ考えてるよ。 形的にもね 四角じゃなくてもいいし、三角でも丸でもいいし 縦長でもいいし.。 黒いからちょっと色気がないなーとも思うからさ、こうなんか簡単にカラフルなタイルでも貼れたらどうかなぁ なんて。
作り始めると悩んでやんなっちゃう時もあるけど、その考えてるうちが楽しくて。
と嬉しそうに語ってくれました。